ゴーン・ガールを観た。
ネタバレを含むかもしれない。
捜査を通じて見るぎこちない夫婦の印象から、段々と夫婦それぞれの主観の描写が増え、結局主観なのだから事実もあやふや、と見え方が変わる流れが滑らかで不気味だった。
エイミーを捜している最中のニックには、外から見て好かれる"夫"の振る舞いが必要だった。これがほんとにド下手クソで非常にハラハラする。そういうスリラー?
ド下手クソな上に、実際に不倫もしている。その辺の意識が薄かったからこそ、教え子で大きく年下で成人するかしないかの子と妹の家も使うとかいう外聞がだいぶドン引きの不倫をして妻にハメられてるのか……
ともかく理解のある弁護士についてもらえたのは良かった。MVPだ。この人いなかったらエイミーが戻ってくるところまで漕ぎ着けなかった。序盤は分が悪すぎてもうダメだ!死にました!ってずっと思っていた。
映画を見ている方としては色々な事実の可能性を考えるが、実際殺してはいないんだろうなとは感じた。ベン・アフレックの力だと思う。
最後、ダン夫妻を内側から覗いた時は暗い気分になりながらも、カタルシスがあった。エイミーがそういう女であることがはっきり表されたたからだ。なんでこんなことになってんの?とちんぷんかんぷんのまま翻弄されてからの、プライドがバカ高いので黙って従ってくださいという本人の開き直りだと、いっそ清々しい。
ただ彼女は極端にしても、役割自体は夫婦に限った話ではない。多くの人にとっては多少なりとも覚えがあるはず。親だから、子だから、友達だから、男だから、女だから、大人だから、人間だから、こうしてほしいという要求を全て避けて人と関係するのは、現状なかなか難しい。ニックがそうだったように、なんとなくでハマっていってしまうことも現実にある。
マーゴが双子の妹なのは、ニックに夫以外の、兄という強めの役割を登場させず、夫としての彼にフォーカスするためなんじゃないかと思った。そしてニックはこのあと父になり、益々エイミーの為の役割を濃厚にする。めっちゃ大丈夫じゃなさそう。エイミーが何を考えているかじゃなくて、自分が何を考えているのかをよく見つめた方がいい。もう遅いが。
1番の見どころはやはりエイミーのやべー奴ぶり。はっきり自覚があるようなので、ファムファタール感は薄い。*1
最初と最後に出てくる上目遣いのじっとりした表情のカットも印象的だが、FBIから尋問を受けているシーン、ガラス越しにニックに微笑みかけた顔がもっとも怖かった。ホラー映画か?