のっぺり

基本的にネタバレに配慮しません。アイドル(ほぼハロプロ)、漫画アニメゲーム、本、ごはんその他の話

シン・エヴァンゲリオン劇場版:||[映画感想]

シン・エヴァンゲリオン劇場版:||を観てきた。

ネタバレを含みます。

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まず準備体操をしておいて本当によかった。4本で一つの作品になっているので、最低限の前提として序破Qは押さえておかねばならない。序からシンまで実に14年近くある*1が、太い一つの筋が通っている作品だ。

 

生きること、居場所を作ること、大人になること*2、人と関わることの難しさやままならなさの集大成になっている作品だった。

序でエヴァ以外の居場所に一縷の望みを見つけ、破で望みのために選択することを決め、Qでは選択の結果を受け止められず、エヴァに拘って失敗してしまったシンジくんを見てきた。

シンでは改めてQまでの結果を受け止めて、新たに結果を伴う選択をした。今のところ、大人になるために必要なことについて最も近い答えだと思っているのが、自分の人生を受け止め、責任を持つことだ。結果としてニアサードインパクトを起こしたことを受け止め、もう一度エヴァに乗る選択をしたシンジくんは、もう大人だった。

 

シンジくんを置いて先に大人になっていた皆のことを、彼はどう思ったろう。ある日起きたら同級生が大人になってたなんて、凄く辛そうな出来事に思える。トウジやケンスケ、ヒカリ、アスカも、年齢以外の意味で明らかに大人だった。

Q以降のアスカは本当に手厳しくて理不尽にすら感じていたけど、シンジくんを子供扱いしないという点でとても誠実なのだと思い直した。彼が辛い目に遭うのを見ているのがしんどくて、まだ14歳なんだし子供扱いして欲しいと思っていたことに気付いた。彼女はシンジくんがいじけて殻に閉じこもっていたとしても、彼に通じると信じているから、この態度なのだ。

 

実際、何でアスカがシンジくんを殴りたかったのか、彼が答えを出すまで全然分からなかった。結局正解していて、彼には通じていた。

綾波を助ける選択が出来た時にはもう立派だと思ったけど、確かにアスカにしてみれば堪ったもんじゃない。

パイロットになるまでが唐突で、覚悟を決める余裕もなかったかもしれない。事情を挙げればキリがない。でも歳若いからと言ってそんな覚悟でエヴァに乗っては、本当はダメなのだ。ゲームじゃないから、人生の重要局面に選択肢を表示してはくれない。それに年齢が若くとも大人にはなれる。

シンジくんには伝わると思っているからこその厳しさだった。一方私はシンジくんを信用していないので、適当に甘やかして手籠にした方が良いと思っていた訳である。コミュニケーションはこんなにも困難なのに、アスカは放棄しない。

 

そして選択できることと、選択した結果を受け止められるかということがまた別なのが、人生の厳しいところだ。綾波を助けるためエヴァに乗るという選択の結果、全てではないけど、多くの命が失われてしまった。アスカを助けられなかった時は予期される結果に対し責任を負いたくないために選択すらできず、綾波を助けた時に今度こそはと選択し、予期せぬ結果を引き起こしてしまった。

でも生きている限り、選択しなければならないし、何とかやっていかなくちゃならない。村で生活する人々と、そこにプラグスーツで入っていくアヤナミの様子が、浮世離れしたエヴァの世界と人生が地続きであることを思い出させる。生きる人々と、生きるシンジくんのお話だった。*3

 

序・破と、シンジくんもレイもアスカも、エヴァにしか居場所がない状態だった。エヴァを失うことを恐れていた。エヴァにしか居場所がないというのは、エヴァを通じてしか社会と関わりが持てないという意味だ。

けれど大人になったシンジくんが望んだのはエヴァがない世界で、きっともうエヴァがなくても自分で居場所を作り、彼らの人生を生きていく。辛いこともあろうが、選択して失敗して、これまでもなんとかやってきた。きっと大丈夫なのだろう。立派なことで、これほど喜ばしいことはない。「おめでとう」だ。

 

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正直まだまだたくさん書きたいことがある*4けど、一番の感想は上記の通りだ。

早めの時間の回を見たから、今日のうちにもう一回見ようかかなり迷った。でも一旦今の状態で受け止めておきたかったのでやめた。テレビアニメ版、旧劇、漫画版をおさらいして、きっとまた観に行こう。

*1:公開日で。

*2:年齢だけ重ねて大人になれないことを気にしつつ、大人になるってどういうことだろうとも未だに思う。シンエヴァのシンジくんはもがいたり傷付いたりしながら、多分大人になっている。

*3:こういう感想を書いていると、フィクションを現実のように受け止めるリリンを立派にやっているなという実感が湧く。

*4:設定とか、個々のキャラクターの気持ちとか、画面とか、色々だ。