『タイタン』を読んだ。
ネタバレを含む。読む前にネタバレを見ない方が良い作品だと思う。
ネットニュースか何かで、労働のなくなった世界が舞台の作品と知って手に取った。なんて羨ましいことだろう。読んだのは連休も終わりの頃だったので現実との差が酷かった。
本作作中でAIやロボットにすべての「仕事」を任せた結果、もたらされたのはモノに時間に余裕のある生活だった。なんと羨ましいことか。もし資本主義に終わりが来るのなら、こんな風に終わって欲しいと願わずにはいられない。そう上手くはいかないことは分かっていても、あんな風に穏やかな生活を夢想した。
AIに多くの仕事を任せる設定のSF作品では、大概AIと人間が対立する(偏見)。しかし本作で人間の面倒を見ているAIであるタイタンは人間を愛していて、人々も無意識下でそれを信じている。そこに通底する安心感があって、コイオスと内匠成果の旅を穏やかな気持ちで見守ることが出来た。神に愛されているような安心感とはいかほどのものだろう。
仕事が嫌いなので、仕事とは何かという問いにあまり深く考え込むことはなかった。しかしこの世界での趣味とはなんだろう。仕事という概念がないと考えると、趣味の輪郭がぼやけた。やることなすこと全て趣味になる。
最も印象に残っているのは、仕事をする自分を認めてもらえたことでタイタンに感謝している旨をナレインが打ち明けるシーンだ。何よりも仕事がないと生きられない人もきっとたくさん居るのだろう。現実世界にも。